認知症の家族に「朗報」は本当? 銀行の新サービス
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ゆず吉です。自治体の集団接種でようやくワクチン接種をすることができました。さすがに90代の父は7月上旬には2回目が終了していますが、実家を往復しながら世話をするこちらがいつまでもワクチン接種もできずに仕事をしたり、電車に乗って中距離を往復したり、毎日不安でひやひやしておりました。ワクチンはまだ1回目、もう1回が無事済むまで、まだまだ気が抜けません。ちょうどニュースで全国民の約半数が2回目の接種を終えたというニュースを見たところですが、50歳代のゆず吉が今だったということは、いかに60歳以上の年齢層が多いことかを指し示す証でもあります。今60歳が75歳となる15年後にはいったいどのような年齢分布となっているのか、そして介護保険を必要とする高齢者がどのくらい増えるのか、介護保険のしくみは機能しているか、考えるとかなりゾッとします。

内閣府が公表する平成27年(2015年)版高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者の認知症患者数は2012年では7人に1人(15%)、2025年には5人に1人(20%)になると推計しています。高齢者数が今よりさらに増えますので、10年後には4人に1人となるかもしれません。いや、3人に1人となることもあります。恐ろしい数字です。

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認知症の親の銀行預金が引き出せなくなる?

認知症になると、本人の銀行口座から預金が引き出せなくなります。これから来る親の介護を心配してネットをさまようときに一番初めに衝撃を受ける事実でしょう。すでに認知症の兆しを認めてから調べ始めた方にはもっと衝撃であったことと思います。たとえ事前にATMカードを預かっていたとしても、本人の意志により代理で引き出してあげたのでなければなりませんが、判断能力が低下し、自らの意志で預金の引き出しができなくなった場合は、原則として成年後見人制度を利用しなければならないこととなっています。

ひと昔前、それこそ、介護保険制度ができる前の頃の話ですが、通帳と印鑑を預かっていれば認知症の親の家族が自由に親の預金を銀行で引き出すことができておりました。そうやって自分の親の介護を行っていたのが今の介護が必要な高齢者世代ですので、口座に預金残高が残っていれば子供が困るはずがない、と思っている親は多いはずです。

子どもに印鑑を預ければよいと思っている親の世代にとっては、それができなくなっていることも知らないばかりか、成年後見人という制度すら知りません。老後の準えが追い付かないまま親の老化が進むと、気づいたときには子供が自分の貯金から親の家賃や生活費・医療費等、すべてを立て替えなければならなくなってしまいます。

成年後見人制度・任意後見人制度

親の通帳と印鑑を持ち出し銀行窓口へ行けば、担当者は本人確認などのステップから、本人ではないことに気づくでしょう。家族だと証明しても、理由を尋ねてくると思います。そこでうっかり認知症というワードを口に出してしまうと、正式な後見人がつくまでは口座を凍結されてしまう可能性もあります。少し前までは、日ごろから支店担当者と懇意にしており、家族の事情を銀行側もよく知っていた場合、同情で黙認してくれる銀行もありました。ところが、最近はそれもできなくなってきたという銀行担当者の話も聞きます。銀行に課せられたコンプライアンス(法令順守)義務が理由だということです。

では、銀行のアドバイス通り、その後見人とやらをつければよいのでは、と思うかもしれませんが、この手続きはひどく煩雑で、しかも少なくない費用が発生します。働く遠距離介護者であれば、何度も平日に休みをとらなければばりません。

手間がかかるうえ、費用もかかる。ただでさえ忙しい働く介護者にとってこんなに不便で不愉快なことはありません。

認知症の親の銀行預金を引き出せるようになる?

2021年2月、新型コロナによる死者の数が増える一方となり、医療崩壊と叫ばれる報道ばかりが目立つ中、認知症の親をもつ家族が親の預金を引き出しやすくなるかもしれないという報道がありました。一時的にはかなり大きなニュースの扱いではありましたが、残念ながらすぐにコロナの話題にかき消されてしまい、世間一般に浸透したようには思えませんし、その後どうなったのかの報道も特に見てはおりません。

ネット上には、弁護士や司法書士による難しい解説や、都合のよい部分だけをピックアップした介護サービス業者のブログ、それをコピペしたかのような介護を知らないブロガーによる表面的な解説が目立ちます。その多くは、「認知症の家族に朗報、銀行預金の引き出しができるように」といったものです。

果たして報道されていたように認知症家族に便利な仕組みになったのでしょうか。介護者目線で検証してみたいと思います。

全国銀行協会の新指針

一般社団法人全国銀行協会ホームページに、2021年2月18日付「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」という資料が公表されています。まずはそこにある別添資料を読んでみてください。タイトルは難しそうな字面が並んでいますが、具体例も交えながら、大変理解しやすい文章で書かれています。

判断能力が低下した場合の対応が各銀行や支店間での取り扱いがまちまちであったことを踏まえ、一定の指針が示されており、原則は成年後見人制度の利用が前提であるとも記されています。

それでは何が朗報だったのかというと、本資料のタイトルにある通り「代理等に関する考え方」です。

無権代理人

前述の銀行協会発表の別添資料にある「無権代理人」に注目してください。法定後見人や任意後見人が法的に有効な代理権を持っていることに対し、無権代理人とは、文字通り、法的に本人を代理する権利(代理権)を持たない者のことです。

確実に一人っ子であり、相続人が他に居ないという例であればまだしも、例えば「介護は任せる」と言ったはずの兄弟姉妹があとから預金の引き出しに文句をつけてトラブルになってしまうこともあり、銀行にとっても無権代理人に自由に預金の引き出しをさせてしまうことはリスクでしかありません。

今回発表の資料には、本人の判断能力が低下しているのに成年後見制度を利用していない場合、本人の利益となることが明らかである場合に限り親族による無権代理取引の依頼に応じることも考えられる、と書いてあります。もちろん無条件というわけではありません。第一の要件として、本人の判断能力が低下しているかどうか、そして第二に、引き出せる預金の使途が本人の医療費や施設入居費、通常の生活費であるかどうか、です。

実に理にかなっていますが、言い換えれば、これまでは当たり前のように本人が本当に必要な医療費や施設入居費であっても引き出しをすることができなかった、ということでもあります。

ここで「なんと便利な世の中になった!」と勘違いをしてはいけません。ここに書かれていることはあくまで銀行協会としての指針を発表したに過ぎず、今すぐにどの銀行でも預金の引き出しができるようになったというお知らせではないからです。

銀行の対応

銀行協会が本資料を発表した際のプレスリリースの本文を再度よく読んでください。末尾に注意書きがあり、当該資料に記載されたものはあくまで「考え方」であり、銀行により異なる対応もある、と明記されております。

さて、半年たった今、各銀行に対応の変化はあったのでしょうか?主だった銀行のWEBサイト上で調べてみました。例えばある銀行では、事前に親族を代理人登録することで一定の取引を可能にする利用料無料の新サービスを開始したと発表していますが、別の銀行では事前に代理人を指定したうえで預金ではなく信託財産として預けた資金から払い出す有料サービスが紹介されていますが、既存の信託銀行のサービスよりは割安感があります。さらに、信託銀行各社は、既存の認知症対策用の信託財産のサービスを、以前より力を入れて解説しております。無料でサービスを提供するメガバンクがあったのは幸いですが、今のところ多くは利便性の面でさほど魅力を感じません。

気を付けたいのは、どの例でも「本人が事前に」代理人を指定して登録するしくみであり、本人の判断能力が十分にあるときに届け出ないとなりません。また、単に新しいしくみの導入が遅いだけかもしれませんが、これまで通り全く変わりのない対応をしている銀行もあるようです。

さらに、いざ利用したいと思ったときの「本人の判断能力」の判断基準や、認定方法も各行により異なるようです。最初に銀行に相談を持ち込む際にうっかり「認知症の兆しが出始めたので・・・」などと口にしてしまうと、おそらくそこから先に進むことはできない可能性もあります。

保険会社の対応

生命保険会社には「指定代理請求制度」、傷害保険にも「代理請求人制度」という制度があります。数年前からサービスを開始しており、届け出によりあらかじめ代理人を指定することで、保険金や給付金を請求を代理することができます。

配偶者や直系親族、同居親族など、代理人として認められる範囲が厳しく定められていますが、今ではすっかり定着した制度として保険会社がその利用を積極的に周知宣伝しております。ただし、当然にこちらも判断能力があるうちに手続きを済ませておかないとなりません。

じゃあ、どうする?

親が認知症になると銀行預金が凍結され、お金が引き出せなくなる、という最悪の事態について、銀行がなんらかの方法を模索しようとしてくれていることは朗報ですが、2021年2月の報道当時の見出しに踊っていたような朗報とは思えません。なぜなら、ゆず吉は、「朗報」の見出しを見た際、てっきり認知症の兆候が出始めてからでも家族であれば引き出しを認めてもらえるのかと思ってしまったからです。(報道の仕方の問題なので、これはメディアの責任ですね。。。)

親本人が「事前」に代理人を指定し手続きをとらないとなりませんので、銀行独自の審査過程で判断能力を怪しまれると手続きそのものを断られることもありそうです。もしグレーゾーンに入りかけて慌てて手続きをしてみようと思い立たれる場合は、できなくなってきたことをリストアップして介護認定調査員に訴えるのとは全く逆のリスト、つまり、あれもできる、これも問題ない、という点をまずは書き出してみてはいかがでしょうか。介護認定の引き上げや施設入居の順位を繰り上げようと、家族は常に必要以上に親の認知機能の低下をアピールしてしまいがちですが、金融機関と接する際は全く逆の行動で臨まないとなりません。

親の認知症対策として、こうした金融事業者の代理人制度は非常にありがたいものですが、手続きは契約者本人、つまり、親が自身で手続きを行わないとならなず、意思確認のために対面で行うことがほとんどです。これは介護者である子どもが頑張ることではなく、親自身が終活として頑張ってもらわないとならないことです。まだ若いから大丈夫とおだてられて、せっかくの手続きを途中で止めてしまうことがないように、成り行きを見守ってあげることも必要です。

親の貯蓄額を聞き出すことと違い、金融機関の代理人制度の話は持ち出しやすいと思います。仮に銀行に代理人の届を出したとしても、代理人が即座に預金を引き出することはできませんし、そもそも親が口座を持つ銀行がこうした新サービスを提供していないかもしれません。金融事業者ごとに対応は様々ですので、未だ親のお金のことで対話ができていない場合、金融機関の取引口座や保険契約をリストアップしてもらうことを親の終活支援の手始めとされてみるのもよいかもしれません。

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